生活感

幸せごはんは相方が初めて作ってくれたスクランブルエッグ
#ふたりの幸せごはん
https://shindanmaker.com/706141

診断メーカーからお題をお借りしました。
ナチュラルに同居している双黒


 

パンがこんがりと焼ける匂いで目を覚ます。朝食はいつも自分で作るのだからそんな匂いがする筈はないと、頭の中で否定しながら寝室を出た。

「お早う」
フライパンに向き合ったまま中也に声を投げかける、太宰の姿が目に入る。
「手前が朝メシ作ってるなんて、今日の天気は雪か」
「起き抜け一言目がそれ?全く失礼だね、私も偶には作るよ」
手元を覗き込めば、片側の端に切れ目の入ったソーセージがフライパンの上で踊っている。所謂タコさんウインナー。
「うわ、気色悪い……」
思わず口をついて出た。眉間に皺が刻まれた気もする。
「可愛いだろう?」
炒めた一つを箸で持ち上げて、にこりと微笑む顔が憎たらしい。
「おいそれ、酒のアテにしようと思って取っておいたやつじゃねぇか」
「ハーブ入りのソーセージ、おいしいよね。わたし好き」
お歳暮でしょ?気が利く取引先だねぇと、おおよそ断言じみた言い方で問う。その通りだが、ご丁寧に返事をしてやる気も起こらない。まぁいい、まとも・・・に作っているようだし、朝食は太宰に任せて一先ず顔を洗おうと思い、洗面所へ向かった。

「さてと」
ひとりごちて、次の手順を頭の中に並べた。卵の賞味期限が近いから、残りを全て使ってしまおうと思い立つ。
少し焦げ目の付いたソーセージを皿に移して、フライパンを軽く洗う。冷蔵庫から卵を3つ取り出し、ボウルに割り落とす。牛乳を少し加え、塩で軽く味付けしたら、白身を切るように撹拌する。卵料理はなめらかな舌触りのほうが好みだ。おそらく中也も。
熱したフライパンにバターを落とし、溶けてきた頃合いを見て火を弱める。卵液を流し入れ、ふちが少し固まった頃合いを見てゆるくかき混ぜ始める。混ぜ過ぎないよう、火を通しすぎないように注意しながらフライパンと向き合う。
「ん、出来た」
フライパンの黒と卵の黄色で、コントラストが目に眩しい。空気をたっぷり含んだ、ふわふわのスクランブルエッグが出来上がった。
(後片付けは中也に任せよう、面倒だし)バターの残りが光るフライパンは、静かにシンクに置いておいた。

「中也ァ、コーヒー淹れて」
「はいはい」
ダイニングに戻ってきた中也に声をかけながら、カトラリーを準備する。食卓にはスクランブルエッグ、ソーセージ、こんがりときつね色に焼き上がった食パンが並ぶ。そして申しわけ程度のプチトマトとレタス。あとはコーヒーだけ、と思いながら椅子に腰掛ける。遅れてやってきたコーヒーをテーブルに置いた中也も席に着いた。
「いただきます」
「どうぞ召し上がれ」

食事中の太宰はあまり会話をしない。口を開けば人をおちょくる奴だが、この時ばかりは珍しく静かになるのだ。好ましい時間。
目の前で黄金色に輝くスクランブルエッグをスプーンで掬い取り、取り皿に乗せて、口に運ぶ。やわらかく、ふわりとした口当たり。控えめな塩の味付けが卵の味を引き立たるようだ。偶にはスクランブルエッグも良いもんだな、と思う。
「美味い」
「それは何より」
太宰は満足げに笑みを漏らした。
続く咀嚼音、の後に、ガリッという音がダイニングに響いた。音の発生地は、中也の口の中。

「……前言撤回」
「えーと、もしかして……卵の殻?」
「卵を混ぜる前に気付けよ……結構でかい殻だぞオイ」
「あははは」

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幸せごはんは相方が初めて作ってくれたスクランブルエッグ(卵の殻入り)